産業医に支払う報酬相場はいくら?産業医採用3つのポイントを解説
産業医を雇おうと考えている人事労務担当の方は
「産業医にはいくら報酬を支払えばいいのか?」
「報酬の相場はどのくらい?」
といった報酬に関する判断基準について悩みがちです。
この記事では、以下の3点について解説していきます。
・産業医について
・産業医の報酬について
・産業医の報酬に差がある理由とは
この記事を読むことで、自社に合った産業医の選び方、そしてそれにかかる報酬がどのくらいなのかがわかります。是非参考にしてください。
【目次】
目次
1.産業医とは
1-1.従業員数による選任義務
1-2.産業医の届け出方法
2.産業医の報酬について
2-1.専属産業医の報酬
2-2.嘱託産業医の報酬
3.産業医の報酬は変動する!
3-1.6つの契約方法
3-2.産業医紹介サービスのメリットと業務
4.最後に
1.産業医とは
産業医とは、企業において労働者が健康で快適な作業環境のもとで仕事が行えるよう、専門的立場から指導・助言を行う医師のことを指します。そのため診察や処方を業務とする通常の医師とは異なります。ですが、通常の医師が産業医の資格をとって業務に従事していくというケースが最も一般的です。
そんな産業医の主な業務は以下の通りです。
・労働環境に対する指導
・健康管理(健康診断や面談など)
・就労制限、就労上の配慮や就労可否の判断
・労働者の病気と業務の関連性の判断
・休職・復職判定等
1-1.従業員数による選任義務
1事業場における従業員が50人以上になったら産業医を雇わなければなりません。また、産業医は従業員の人数によって、雇わなければならない種類・人数が変わってきます。それが以下の表になります。(「専属」「嘱託」という言葉は後程)
※事業場=同じ場所で関連する組織的な作業をできる場所の単位のことで、支店、支社、店舗ごとに1事業場となる
※従業員=パート・アルバイト・派遣社員・契約社員も数に含める
人数 | 産業医の人数 |
~49人 | 選任の義務はなし |
50~499人 | 1名以上(専属/嘱託産業医) |
500~999人 | 1名以上(専属/嘱託産業医) ただし有害物質を取り扱う場合は専属産業医に限る |
1000~3000人 | 専属産業医1名以上 |
3001人~ | 専属産業医2名以上 |
この表に沿って、産業医を雇わなければならない事由が発生してから14日以内に選任することが法律で定められています。その事由として主に挙げられるのは以下の3点です。
- 従業員が50人になった
- 産業医が辞めてしまった
- 産業医を解雇した
ちなみに産業医を雇わなければならないのに雇っていないことが発覚した場合、法律で50万円以下の罰金が課せられます。
1-2.産業医の届け出方法
産業医と契約をしたら、それを労働基準監督署に報告しなければなりません。この場合は以下の書類が必要になります。
- 産業医選任報告2部(1部は事業所控え)
- 医師免許のコピー
- 産業医認定証のコピー
産業医選任報告の書類は、厚生労働省のホームページからダウンロードが可能です。以下に報告書の見本を載せておきますので参考にしてみてください。
出典はこちら:URL ーhttps://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei36/20.htmlー
また、現在はオンライン上で入力をして、そのまま印刷することができるシステムもありますのでぜひ使ってみてください。
出典はこちら:URL ーhttps://www.chohyo-shien.mhlw.go.jp/ー
2.産業医の報酬について
それでは実際に報酬について見ていきましょう。産業医は「専属産業医」と「嘱託産業医」の2種類があります。勤務形態が変わるだけで基本的な業務は変わりませんが、その種類によって報酬は変わってきます。
簡単に専属産業医と嘱託産業医についてまとめた表がこちらです。
専属産業医 | 嘱託産業医 | |
勤務形態 | その事業場のみに専属として従事 | 通常は病院勤務でたまに会社に訪問 |
勤務日数 | 平均週3~4日 | 月に1~数回・1回数時間 |
2-1.専属産業医の報酬
その事業場のみに専属として従事している産業医のことを専属産業医といいます。その専属産業医の年俸の算出式は以下のようになります。
年俸 =(300〜400万円) × (週あたりの勤務日数)
この計算式から出した、勤務日数による年収は以下の表のようになります。
勤務日数 | 年収 |
週1日 | 300~400万円 |
週2日 | 600~800万円 |
週3日 | 900~1200万円 |
週4日 | 1200~1500万円 |
週5日 | 1500~2000万円 |
専属産業医は大体週1日は研究日に当てることになるため、週3~4日勤務の方が多いです。
その他、都心部から離れる・統括産業医になるといった場合は報酬がこちらよりも割増しになる傾向があります。
2-2.嘱託産業医の報酬
嘱託産業医は、専属産業医とは異なり、普段は病院の勤務医や開業医として働いている医師が、月に1~数回・1回数時間、会社に訪問をする勤務形態をとります。
この場合、従業員が多くなるほど業務の負担が大きくなるため報酬も高くなっていきます。日本橋医師会が嘱託産業医活動を行っている会員医師に対し行ったヒヤリングの調査結果はこちらのようになります。
労働者数 | 基本報酬(月額) |
~49人 | 75,000円~ |
50~199人 | 100,000円~ |
200~399人 | 150,000円~ |
400~599人 | 200,000円~ |
600~999人 | 250,000円~ |
(ストレスチェック・健康診断の実施、予防接種等の費用は含まない)
企業を訪問する際に訪問料として別途5~10万円がかかってしまう場合もあります。その他、有害物質の取り扱いがある事業場、一般内科医ではなく専門性が問われる精神科医等を雇う場合などは報酬がさらに割増しになることが一般的です。
3.産業医の報酬は変動する!
これまで報酬について見てきましたが、様々なオプションや事情で報酬は大きく変わります。その原因をまとめてみました。
- 産業医との契約方法(業務委託契約の場合、仲介・紹介料等の手数料がかかる)
- 事業場の地域による差
- 産業医に求める業務内容(面談、ストレスチェック、社内研修など)
- 事業場における有害物質の取り扱いの有無
- 求める産業医としてのスキル
- 産業医のキャリア・経歴
- 産業医に英語や外国語の能力(外資系企業の場合)を求めるか
- メンタルヘルス対策をメインにするか
そしてこの中でも契約方法と業務内容について詳しく見ていきたいと思います。
3-1.6つの契約方法
契約方法によって、報酬の算出方法が変わります。ここでは、その方法についてまとめてみていきます。
契約方法 | 費用について |
医師会に相談・ または近隣の病院に直接依頼 |
費用は安め。交渉によって多少前後する |
健康診断実施機関に依頼 | 健康診断契約とセットになることが多い |
人からの紹介 | 医師への報酬+紹介者への謝礼 |
人材紹介会社(産業医紹介サービスの利用) | 月額料金の支払い+紹介手数料 |
人材紹介会社は、基本的に会社が仲介に入る間接契約となります。ただ中には紹介のみで医師と直接契約を結ぶ場合もあります。
3-2.産業医紹介サービスのメリットと業務
様々な契約方法がある中、産業医紹介サービスのメリットとは何でしょうか?簡単に以下にまとめました。
・産業医とトラブルがあった際も紹介会社が間に入ってもらえる
・解任した際もスムーズに次の産業医を紹介してもらえる
・付随するサービスが多く、充実した産業保健制度を整えることができる
医師との直接契約は産業医とトラブルがあった際に解任しにくかったりなどということがありますが、人材紹介会社はそのような面倒なことも起きません。
しかし一方で、サービスが多い故にどんどん費用が増えていってしまうこともあります。それを防ぐためにも、必要なサービスを見極めて選んでいくことが重要です。その際は以下の点を考えて選ぶべきでしょう。
【産業医サービスを選ぶ際に考えるポイント】
- 自社の課題
- 労働環境
- 従業員の様子
- かけられるコスト
他にも、法的に問題がなければよいのなら最低限のサポートで費用を抑えたい、といった決め方もあるでしょう。
4.最後に
この記事を読んで、産業医といっても種類があり、従業員数によって雇う産業医が変わってくること、そしてそれに伴って報酬額も変わってくることが分かったと思います。
様々なオプションや要因で報酬は変わってくるので、自分の企業に合った形を考えながら予算を立てましょう。
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