えっ、そうだったの!?5つの要点から丸わかり!産業医費用ガイド
会社は規模に応じて産業医を雇う義務が発生しますが、気になるのが費用について。
特に、以下のような点は人事や労務の方には気になるところです。
「産業医を雇うものの、報酬以外にどんな費用がかかるのか気になる。」
「産業医はどんな風に自社の役にたつのか?」
「カウンセリングと産業医面談について会社と労働者でどんな準備が必要?」
近年働き方改革で職場のワークライフバランスの向上が求められていますが、産業医と上手く付き合うことがトラブルの火元を消すことにも繋がります。
この記事では、産業医の役割と実務、発生しうるトラブルを解説した上で、以下について5つのポイントで紹介しています。
・産業医関連の費用について
・どのように産業医と付き合えば従業員の満足度を上げられるか
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【目次】
目次
1.産業医の役割
1-1.産業医の役割と法的拘束力
1-2.カウンセラーと何が違うのか
2.業務の流れ・産業医と労働者の関係図
3.産業医諸費用一覧ガイド
3-1.ストレスチェック
3-2.健康診断
3-3.産業医面談
4.産業医あるあるクエスチョン
4-1.労使間費用トラブル~どこから個人負担なの~
4-2.使用者vs産業医トラブル
4-3.どこまで産業医にお任せできる?
5.産業医と働き方改革
5-1.産業医との上手な付き合い方
5-2.産業医と作る働き方改革
6.おすすめの産業医紹介サービス
7.まとめ
1.産業医の役割
産業医は一般的な医師とは異なる、役割と法的拘束力を持ちます。
2018年の労働安全法改正により、産業医の役割も法的な職務提供から職場の課題解決を目指したものに変化しました。
まずは産業医の役割からみていきましょう。
1-1.産業医の役割と法的拘束力
産業医とは、労働者が健康で快適な作業環境のもとで仕事が行えるよう、専門的立場から指導・助言を行う医師のことをいいます。通常の医師とは違い、産業医は診断や処方をすることはなく、必要と判断した場合、産業医から医療機関を紹介したり、休業や復職などの判断をします。
・労働環境や健康増進に対する指導
・就労制限、就労上の配慮や就労可否の判断
・病気と業務の関連性の判断
・企業に対しての勧告
・休職、復職判定など
産業医は直接的に医療行為を行うのではなく、企業にとっても、労働者にとっても気軽に相談できる会社のかかりつけ医としての役割を担っています。
≫≫もっと具体的に知りたい方はこちらのページが参考になります。
また産業医は業務に関して4つの法的拘束力を持ちます。具体例と共に確認していきましょう。
①産業医の勧告権
産業医の立場から見て、職場改善が必要であれば事業主に対して勧告を行います。(※1) もし産業医に労働環境が不適切だと判断されたら、検討しなければいけません。
そして事業者は、産業医勧告の内容と実際の措置(措置をしない場合はその理由)を記録し3年間保存に加え、衛生委員会や安全衛生委員会に、勧告の内容とそれに対する措置の内容を報告する必要があります。
※1:改正安衛法第13条第6項、改正安衛則第14条の3第3項、第4項「事業者は勧告を尊重し、勧告を受けたときは、その内容を衛生委員会や安全衛生委員会に報告しなければならない」に準ずる
②産業医に対する情報提供義務
次に産業医は、衛生委員会や安全衛生委員会に対して必要な調査審議を求めることができます。(※2)
例えば、「会社の飲酒率を調べてください」という産業医からの求めがあれば、事業者や衛生委員会などは調べて報告しないといけません。
※2:改正安衛法第14条第3項「産業医を選任した事業者は、産業医に対し、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の労働時間に関する情報その他の産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報として厚生労働省令で定めるものを提供しなければならない。」「産業医は、第一項各号に掲げる事項について、総括安全衛生管理者に対して勧告し、又は衛生管理者に対して指導し、若しくは助言することができる。」に準ずる
③産業医の業務内容・相談方法を周知する義務
産業医の業務内容・健康相談を申し出る方法も企業に周知します。(※3)
つまり、産業医は過重労働面接や健診以外でも、いつでも健康相談にのってくれるということを開示する必要があるのです。これは、過労死や過労自殺を防ぐためです。
※3:改正安衛法第101条第2項、第3項、改正安衛則第98条の第1項、第2項「産業医を選任した事業者は、その事業場における産業医の業務の内容その他の産業医の業務に関する事項について厚生労働省令で定めるものを、常時各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けることその他の厚生労働省令で定める方法により、労働者に周知させなければならない。」に準ずる
④産業医の定期巡視権限
産業医は事業所を月1回巡視する義務があり、事業所はそれを断ってはいけません(※4)ちなみに下記のような情報を把握している場合は、産業医が2か月に1度の巡視でもよいとされてます。
ア:衛生管理者が少なくとも毎週1回行う作業場等の巡視の結果 ・ 巡視を行った衛生管理者の氏名、巡視の日時、巡視した場所 ・ 巡視を行った衛生管理者が「設備、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるとき」と判断した場合における有害事項及び講じた措置の内容 ・ その他労働衛生対策の推進にとって参考となる事項
イ:アに掲げるもののほか、衛生委員会等の調査審議を経て事業者が産業医に提供することとしたもの
ウ:休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1か月当たり100時間を超えた労働者の氏名及び当該労働者に係る超えた時間に関する情報
※4:改正安衛法第15条「産業医は、少なくとも毎月一回(産業医が、事業者から、毎月一回以上、下記に掲げる情報の提供を受けている場合であって、事業者の同意を得ているときは、少なくとも二月に一回)作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。」に準ずる
1-2.カウンセラーと何が違うのか
産業医は単なる相談役ではありません。法律的に持つ権限以外のカウンセラーと産業医には3つの違いがあります。
①医師免許の有無
産業医はあくまでも「医師」だというのが明らかに大きな違いです。
医学的な見地だけでなく、他の医師への紹介状を書くこともあるので、自身も医師であることが厚生労働省から定められています。
(一定の研修を受けた看護師、精神保健福祉士が産業医の業務の一部を担うことができます。)
②産業医には一定単位の研修が必要
産業医は医師だけでなく「認定産業医」という産業医としての資格もまた必要になります。
その資格を得るため、産業医研修(医師会等が開催するもの)を受ける必要があり、日本医師会認定産業医制度に基づく基礎研修会を受講しなければなりません。
✔前期研修:14単位以上
✔基礎研修会 実地研修:10単位以上
✔後期研修:26単位以上
→合計50単位以上
③産業医は事例性を見る
産業医は、メンタルヘルス疾患を抱えた労働者の症状を診断・治療するのではなく、悪化しないように配慮・助言をし、さらに職場の労働環境を良い方向にマネジメントすることです。
そして個人の問題の根本が労働環境にある場合、業務上何が問題になっているかなどの客観的な事実を見極めなければならないのです。
2.業務の流れ・産業医と労働者の関係図
産業医は職場の課題解決役ですが、個人にとっても産業医が重要な役割を果たしていることは間違いありません。ここでは、産業医と労働者個人の関わり方・距離感を解説します。
ストレスチェック業務の流れ
健康診断後の面接、長時間労働者面接指導の流れ
ストレスチェック、健康診断、面談の3つでもこれだけ多くの業務があります。産業医の労働環境改善・解決の流れがわかったところで、次は費用についてみていきましょう。
3.産業医費用一覧ガイド
ストレスチェック・健康診断・産業医面談において、産業医が持つ役割は非常に多いです。特に以下の3点は代表的なものです。
業務 | 産業医の役割 |
ストレスチェック | 実施に当たり社内ルールの確定 労働者に対して実施 高ストレス者との面談 企業側への勧告 分析と改善策の確定 |
健康診断 | 定期健康診断結果報告書の記入 健康診断結果一覧表に就業判定 就業制限・就業不能社員に対して「意見書」の作成 |
産業医面談 | 事業所からの情報をもとに対象者に面接の勧告 面談指導 必要によっては専門医院の紹介 事業所に対して労働者への措置に関する意見提供 |
そのため、この3点では報酬とは別に費用が発生しうる場合があります。産業医によっては自身で行わず、外部委託をする場合があり、別途費用がかかることもあります。
実際にどんな費用がかかるのか、次の章で確認しましょう。
3-1.ストレスチェック
法律上最低限必要なストレスチェックの実施には主に次の①~④の費用がかかります。
- 産業医に支払う費用
- 実施者に支払う費用(①に含まれる場合あり)
- 回答と集計・分析にかかる費用(外部システムを利用する際のシステム利用料等)
- 高ストレス者の面談にかかる費用(①に含まれる場合あり)
ストレスチェックの実施については+αで業務が発生するため、別途料金が発生することが多いようです。外部委託の場合、③のサポート範囲の違いで、数万円~数百万円まで金額に差が発生します。
そして、ストレスチェックで最も費用がかかるのは①の産業医に支払う費用です。
産業医の単価は人によって異なりますが、月あたり平均3万円/1h。そのため高ストレス者が10名で1人1時間の面談であれば、10人×1時間×3万円=30万円がかかります。
単価の高い産業医の負担を減らし、産業医にしかできない業務に専念してもらう。
・ストレスチェックの実施者→産業医以外でも保健師、研修を受けた看護師または精神保健福祉士でも可能
・高ストレス者との面談→対面での面談であれば産業医でなくても良い(厚生労働省の指針では産業医が望ましいとされているが法的義務ではない)
ストレスチェックを外部委託する際にも、実施者の資格や面談担当予定者の専門などを聞けば、外部委託先との交渉の余地もあるかもしれません。
≫≫もっと具体的に知りたい方はこちらの記事も読んでみてください。
3-2.健康診断
健康診断の際に発生する費用は以下の通りです。
- 健康診断費用
- 健康診断後の面談費用
- 二次検査費用(個人負担)
企業には健康診断の実施義務があるので、①②は企業が負担すべきです。③については労使間の調整が必要であり、スムーズな検診のため、交通費程度は負担する企業もあります。
診断の結果が「異常者」ではないが「就業を続けるのが困難」という判定がでた社員については、意見書として記録しておくと、後で対象労働者のその後を追ったり、産業医としての業務遂行の記録証明にもなります。
健康診断結果については記録を作成し、5年間保存しなければなりません。鍵付きだとよいでしょう。(※5)
※5:安衛則第51条、安衛法66条の3に準ずる
3-3.産業医面談
月100時間超の時間外・休日労働または、2~6ヶ月平均で80時間を超えた場合、該当する労働者に対して産業医による面接指導が義務付けられています。これは産業医側から面接を勧奨する必要があります。(※6)
(努力義務:月80時間超の時間外・休日労働があった場合面接指導またはそれに準ずる指導が必要)
産業医面談にかかる費用は以下の通りです。
- 交通費(面接場所が社外の場合)
- 面談費用(企業負担が望ましい)
- 専門医からの診断書費用(企業側が必要な場合は企業負担)
- ストレスチェック後の高ストレス者に対しての面接費用(企業によって異なる)
- 紹介先での医療費(個人負担)
面接指導の費用は事業者が負担(※7)、実施についても所定労働時間内に行う必要があります。もし面接指導が時間外に行われた場合は、割増賃金を支払います。
また、診断書の提出や紹介先での医療費などの費用は、会社の責任で発生したものでない傷病の場合、自己保健義務により個人負担になります。しかし、会社側が要求する場合は、会社が負担することが望ましいです。
出典はこちら:URL ーhttps://www.mhlw.go.jp/content/000497962.pdfー
※6:改正安衛法第66条の8の2第1項、第2項、改正安衛則第52条の7の2第1項、第2項に準ずる
※7:新安衛法より「事業者に当該面接指導の実施の義務を課している以上、当然、事業者が負担する必要があります。」に準ずる
産業医の面談費用に関しては、産業医をどのように選任したかで大きく異なってきます。知り合いの医師などに直接依頼して産業医になってもらう場合は、医師によってかかる費用が変わってきますが、”産業医紹介サービス”などを使う場合は、月額固定費用でのサービスを受けることとなります。
月に何度の訪問、一回の訪問あたりの時間などにより、費用は約3万円〜10万円になるのが一般的です。
≫≫産業医紹介サービスについてはこちらの記事も読んでみてください。
【法人向け】診断も面談も丸投げ!6つのお勧めストレスチェックサービス比較
4.産業医あるあるクエスチョン
産業医の役割が再認識されてきたのは最近ですが、産業医に関連してよくあるトラブルとして、労使間の費用負担トラブルが挙げられます。
社員の健康やメンタル面でのサポートという繊細な部分において企業側と労働者間で費用負担が調整されていないこと、その線引きは両者にとっての不満の原因となります。今回は、3つの産業医関連のトラブルについて具体例を交えて紹介します。
4-1.労使間費用トラブル~どこから個人負担になるのか~
産業医や会社に勧められて行った診察は会社負担になるのでしょうか?
労働関係法令により従業員のメンタルヘルス管理責任は会社が持っていますが、ポイントは診察医師が産業医・主治医のどちらとしてなのかによると思います。
その他の例も見ていきましょう。
トラブル例 | 対応 |
産業医に紹介された診察の場合 |
その医師は主治医となるので個人負担 |
会社が産業医の診断を求め、その医師から面談以外に採血や投薬を受けた場合 | 主治医としての対応なので、 個人負担が望ましい |
復職や休職など自身の状態についての相談のみだった場合 | 事業場の安全配慮義務履行のための行為なので、事業場負担 |
会社側が診断書の提出を求めた場合 | 診断書発行手数料は会社側が負担 |
産業医への面談のために発生した費用 | 会社側が負担 |
4-2.使用者vs産業医トラブル
①産業医は必ず安全衛生委員会と月次巡回に参加しないといけない?
産業医は、衛生委員会等に出席する必要があります(※8)。巡回については月1回以上必要であるが、下記条件の情報を産業医が把握している場合、2カ月以内毎に1回以上の巡回で問題ない場合があります。
①事業者が月1回以上把握する長時間労働者に対する面接指導の基準に該当する労働者及びその労働時間数
②作業環境、作業方法等の問題点の把握にとって有用な週1回以上の衛生管理者の職場巡視の結果
③①及び②のほか、各事業所の状況に応じて衛生管理委員会において審議のうえ定める事項
※8:改正安衛則第23条第5項「産業医が衛生委員会等に対して調査審議を発議するときは、発議の趣旨等を産業医から他の委員に説明する必要がある」に準ずる
②産業医があまり会社に合ってない
産業医を解任することはできます。しかし産業医の身分の安定性を担保し、その職務の遂行の独立性・中立性を高める観点から、解任の理由を衛生委員会に約1か月以内に報告する必要があります。(※9)
こうした事態に便利なのが、産業医紹介サービスです。選任した産業医と相性が合わずに変更したい場合も、追加料金なしで産業医の変更を受け付けてくれます。(サービスにより有料の場合もあります。)
※9:改正安衛則第13条第4項に準ずる
③産業医からの勧告って絶対?
あくまでも勧告なので絶対ではありません。しかし、勧告の内容・それに対する措置(措置を行わない場合はその理由)を衛生委員会に報告する必要があります。(※10)
ちなみに、産業医は、勧告をする際は、あらかじめ勧告の内容について、事業者の意見を求める必要があります。これは勧告の趣旨等が事業者にしっかりと理解・共有されるようにするためです。
※10:改正安衛法第13条第6項、改正安衛 1 則第4条の3第3項、第4項「事業者は、勧告を受けたときは、勧告を尊重する義務から勧告を受けた後、おおむね1月以内に勧告の内容、勧告を踏まえて講じた措置又は講じようとする措置の内容(措置を講じない場合にあっては、その旨・その理由)を衛生委員会等に報告しなければならない」に準ずる
4-3.どこまで産業医にお任せできる?
面談について、産業医以外でできる部分もあります。
ストレスチェックの実施・高ストレス者や長時間労働者に対する面談を全て産業医に一任すると費用が高くなったり、本来依頼すべき業務が回らなくなる可能性があります。産業医は多くの場合、稼働時間が決まっており、その稼働時間内で様々な業務をこなす必要があるためです。もしも産業医だけでは手が足りない場合はストレスチェックなどを産業医以外に外部委託できないか考えましょう。
産業医以外の医師に委ねられる具体的措置は以下の3点です。(※11)
- 健康診断、その結果に基づく措置
- 長時間労働者に対する面接指導、その結果に基づく措置
- ストレスチェック・高ストレス者への面接指導・その結果に基づく措置
法的にはストレスチェックの実施者は産業医、保健師、研修を受けた看護師または精神保健福祉士であればよいです。
産業医が内科医で、外部に協力してくれる精神科医の方がいる場合などは、産業医でなくてもその精神科医に依頼をすることもできます。産業医に任せる部分を制限して費用を抑えながら、より適切な処置を行える可能性があります。
※11:安衛則第14条第一項に準ずる
5.産業医と働き方改革
働き方改革関連法は、2020年には大企業だけでなく中小企業も対象となりました。労働者のタイムマネジメントが上手くいかず、残業などが重なると即座に「ブラック企業」と烙印を押されてしまいます。最近では企業の口コミを扱う転職サイトも増え、労働者からの評価が非常に重要になっています。
こうした中、産業医への考え方も単なる法的な業務をこなす存在から、企業の問題点・不安・リスクに対して産業医学の立場からアドバイスをする専門家へと変わっています。さらに、産業医と課題に向かえば、労働環境における風評被害、訴訟リスク、健康リスクといった問題を予防できるのではという期待もあります。
そこで最後に、働き方改革について産業医がどのようにコミットできるのかを考えていきましょう。
5-1.産業医との上手な付き合い方
①正確な情報を提供する
産業医に対しては、以下の3つの情報を提供する必要があります。
- 健康診断の事後措置のために必要となる情報
- 残業時間が100時間/月超の労働者の情報
- 産業医が労働環境の改善のために必要と思われる情報
タイムカードやPCの使用時間から、客観的で正確な労働時間を取得しましょう。(※12)
正確な情報提供により産業医との協力ができ、事業所の課題と合致する施策を打ち出せるのです。
※12:改正安衛法第66条の8の3、改正安衛則第52条の7の3第1項、第2項「事業者が労働時間の状況を把握する方法としては、原則として、タイムカード、パーソナルコンピュー タ等の電子計算機の使用時間(ログインからログアウトまでの時間)の記録、事業者(事業者から労働時間の状況を管理する権限を委譲された者を含む。)の現認等の客観的な記録により、労働者の労働日ごとの出退勤時刻や入退室時刻の記録等を把握しなければならない」に準ずる
②課題を深掘りし、一般論でなく企業に合った解決法を模索する
現在の職場の課題を明確にする作業を一緒に行う必要があります。
例えば、プロジェクトの佳境時は残業時間が長くなってしまう問題があります。そんな時に「労働時間の短縮!」と叫んでもなかなか効果がありません。
「なぜ労働時間が伸びてしまうのか」「人が足りないのか」「プロジェクトの繁忙期にはどうしたら負担が減らせるのか」「過度なストレスを有している社員には面談する必要があるか」など産業医とともに医学的な見地から企業ごとの課題の深堀を行っていく必要があります。
さらに予防的なアプローチを行っていくことも必要になります。企業側と産業医がコミュニケーションを取ることによって少しずつ課題が解決していくのです。
③面談できる人を産業医以外にも作る
最も重要なことは労働者の課題解決や負担を減らしていくことです。労働者の多種多様な悩みを、できるだけ時間と費用をかけずに解決できる手段を会社が持つことが重要です。
産業医が内科医で労働者のメンタルチェックを効果的に行いたい場合、産業保健師を追加したり、カウンセラーに外部委託することなども考えられます。産業医が紹介状を書くだけの存在であってはならないのです。
5-2.産業医と作る働き方改革
働き方改革の中で、残業時間の上限が決められるなど、より高い生産性を生み出せる働き方が求められており、同時に産業医の役割が重視されています。
前述したような残業や、高ストレス者への対応を行わなかった場合、産業医を通して記録に残り続けることとなり、労働者とトラブルに発展するなど、企業にとって非常にハイリスクな状況となります。
どうすればより良い働き方改革を産業医と作っていけるのでしょうか。
①面談を希望しやすい環境を作る
企業としては、産業医の業務内容・産業医に健康相談を申し出る方法を周知します。(※13)これは過重労働面接や健診以外でも産業医の健康相談を頼めるということを事業者は開示するためです。
面談は企業を通じて産業医に申し出る必要があります。しかし、一度企業を通すのが嫌で躊躇ってしまう・不安に思うケースもあります。事業者側が申し出による不利益を労働者に行使することは法律によって規制されていますが、企業側の申し出しやすい環境作りは欠かせません。こうすることにより、企業側は「労働環境を健全・改善しようと努力したこと」を表明する必要があります。
事業所の中には面談への心理的なハードルを下げるために、産業医に恋愛相談を行うような事業所もあるそうです。
※13:労働安全衛生法第101条「事業者は、産業医の業務内容などを常時作業場の見やすい場所に掲示し、労働者に周知させなければならない」に準ずる
②労働時間の管理
労働者の残業時間は、今までは月45時間を超えた場合の行政指導以外で法的な規制はありませんでした。しかし働き方改革関連法では、ついに下記のような法的な規制が設けられました。この認識を持ちながら産業医と残業時間のマネジメントを行う必要があるかと思います。
・残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、 臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできない。 (月45時間は、1日当たり2時間程度の残業に相当)
・臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、 ・年720時間以内 ・複数月平均80時間以内(休日労働を含む) ・月100時間未満(休日労働を含む) を超えることはできない。 (月80時間は、1日当たり4時間程度の残業に相当) また、原則である月45時間をこえられるのは、年間6ヶ月のみ。
③面談後の措置を迅速に進める
実際、産業医が労働者に対してコミットできる部分というのは
- 直接の面談指導
- 労働者に対する措置について事業者に対する「勧告」
の2つのみです。
つまり、産業医との信頼関係が築かれていない場合には勧告に対してのリアクションが遅れてしまうことが考えられます。また産業医の勧告は、事業者から提出される情報をもとに面談や衛生委員会を経て行われます。
そのため労働者の労働環境への改善には産業医の質だけでなく事業者とのコミュニケーションが求められるのです。
おすすめ産業医紹介サービス
最後に費用の観点からコスパのいい産業医を選任するためにおすすめの「産業医紹介サービス」をいくつかご紹介します。
最初の選任では複数の産業医に資料請求をして比較検討することになりますので、以下のサービスは業界でも高評価の産業医紹介サービスです。
是非資料請求しておくことをおすすめします。
産業医クラウド(avenir産業医)
産業医クラウド(avenir産業医)は、メンタルヘルス対策を中心に、充実かつ多彩なサポートを行う産業医紹介サービスです。
産業医の面接通過率は20%と選りすぐりの産業医を紹介できる環境が整っています。かつメンタル面での離職・休職率低下に対し、効果的な提案ができる人材です。
さらに、産業医クラウドが重視している産業医の能力6つの中に「復職支援対応」「精神医学の知識と技術の取得」といった項目があります。
これらの各能力に対し研修を定期開催して、継続的な産業医のスキルアップを心掛けています。
また産業医だけではなく「ELPIS」というITサービスを持っており、こちらを利用してメンタルケアに関する健康相談や法人向けの研修等も行っています。
したがって、産業医だけではなくこのELPISや保健師・CSチームが一丸となってバックアップをしてくれるので大変安心です。
質が高く、かつメンタルヘルスにも対応できるバランスのいい産業医をお探しの方にぜひおすすめしたいサービスです。
Carely産業医
Carely産業医はIT企業に特化した実務スキルとメンタルヘルスへの対応方法を習得した産業医を提供しています。
IT業界は年間労働時間が平均よりも非常に高く、メンタル不調が多い業界です。もちろんその分休職者も多い。そこに絞ってIT企業専門の産業医を自社で育成・研修しています。
そしてIT業界特有の事情を踏まえたサービスを提供してもらえます。特にIT企業に多い在宅勤務や裁量労働制などといった制度にも対応できます。
多くのIT成長企業での実績もあり、信頼できる産業医紹介サービスなので、IT企業の人事の方には特におすすめです。
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パラゴンもメンタル疾患に強い産業医サービスです。
職場復帰支援はもちろん、メンタルヘルス関連のセミナーや企業の健康年齢算出・それに伴う健康投資内容の提示も行います。
さらに企業の現状を分析し、希望に合わせた支援システムの設計~実装まで行います。もちろんより高度かつ専門的なサービスを提供する提携先との調整も任せることも可能です。
また精神保健福祉士や社会福祉士と連携し、介護支援サービスを提供することで介護離職防止の取り組みも行っています。
メンタル面の総合的なサービスを求める企業の方にはおすすめです。
6.まとめ
・産業医は課題の発見・解決が仕事
・産業医には報酬以外の所で費用が発生する場合もある
・産業医以外にも任せられる業務部分もある
・正確な情報提供と、その企業ごとの対策を一緒に立てるのが大切
・労働者が面談を申し出しやすい雰囲気を、企業と産業医が一緒に作るべき
今まであいまいであった、労使間での費用負担の調整や、産業医との付き合い方を理解することができたでしょうか?
これから労使間の健康管理というのは、直接的な生産性だけではなくその企業の在り方までを映していくと思います。産業医の存在は、労使間のどちらの満足度も上げるにあたって最も重要な役割となっていくでしょう。
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