助成金を活用した産業医の設置方法! 効果的に活用する方法を紹介
働き方が多様化してきた現代において、労働者の健康促進や職場環境改善のために、改めて優秀な産業医の選任を考えている方は少なくないでしょう。優秀な産業医を選任し、従業員が健康を保ちながら働ける環境作りを行うことは、将来的に企業価値を高めることにもつながるため、非常に重要です。しかし産業医の選任には、医師会から紹介を受けるか、紹介サービスを利用するかどうかに関わらず一定のランニングコストが発生するため、二の足を踏んでいる方も多いでしょう。そこで利用できるのが、産業医が行う活動の費用に関して一定の助成を受けられる、助成金制度です。この記事では従来の「小規模事業場産業医活動助成金」と、新しい「団体経由産業保健活動推進助成金」という制度に関して、団体の助成要件や対象となる産業医活動も含めて、詳しく解説していきます。
【目次】
小規模事業場産業医活動助成金とは?
小規模事業場産業医活動助成金とは、労働者が50人未満の職場(小規模事業場)が産業医の選任にともなって最大60万円の助成を受けられる制度のことです。この助成金には以下3つのコースがあります。
- 産業医コース
- 保健師コース
- 直接健康相談環境整備コース
産業医コース・保健師コースでは最初に産業医と契約を行い、産業医は契約に基づいて産業医活動を実施します。助成金は6ヶ月ごとに10万円の申請が可能であり、産業医・保健師ごとにそれぞれ20万円(計40万円)の助成金申請が可能です。さらに直接健康相談環境整備コースを利用すると、さらに6ヶ月ごとに10万円が支給(計20万円)され、最高で60万円の助成金を受けられる制度です。ただしこの制度は2022年の11月に廃止が決定されており現在は申込むことができません。小規模事業場産業医活動助成金は現在「団体経由産業保健活動推進助成金」という新しい助成制度に変わっています。
産業医設置で助成金を受給するためには
助成金はどのような団体でも受給できるわけではありません。次からは、産業医の設置で助成金を受給するために求められる要件について解説していきます。
受給できる要件の確認
団体経由産業保健活動推進助成金を受給できる団体の要件としては、次の点が挙げられます。
事業主団体などの要件
- 事業主団体または共同事業主であり、労働者災害補償保険の適用事業主である
- 資本金または出資の総額が3億円を超えない
- 小売業・サービス業であれば資本金または出資の総額が5,000 万円を超えない
- 卸売業であれば資本金・出資の総額が1億を超えない
労災保険の特別加入団体の要件
- 特別加入団体の事業活動状況に問題がない
- 特別加入団体の財政が健全である
- 過去に補助金などの不正使用など事案がない
- その他、事業実施上の問題がない
今回は重要な点のみ記載しましたが、独立行政法人労働者健康安全機構が発行する「団体経由産業保健活動推進助成金」の手引きにはさらに細かく要件が記載されています。団体経由産業保健活動推進助成金の利用を検討しているなら、必ずチェックしましょう。ただし当要件は令和4年度のものであるため、今後内容に変更が加えられる可能性があります。
活動内容の明確化
団体経由産業保健活動推進助成金を受給するためには「団体の目的、組織、運営および事業内容を明らかにする規約、規則などを有する団体」である必要があります。次の要件を満たさない場合は支給されません。
- 助成金の交付申請を行い、交付決定を受けた団体などである
- 事業実施計画に基づき、事業を実施した団体などである
- 1および2に基づく成果を明らかにする書類を整備している団体などである
申請時に提出する「支給要件確認書」には「事業主団体などの活動内容の概要」という欄に活動内容を記載する必要があります。例えば「従業員を対象に個別相談やメンタルヘルスケアなどの支援を実施する」のように、助成金を申請する目的を明確化したうえで記載することになります。
助成額の確認
団体経由産業保健活動推進助成金の助成額は、1つの事業者団体などまたは特別加入団体あたり「100万円」までとなります。産業医が提供するサービスに伴う費用の5分の4が支給されるため、必ずしも100万円支給されるわけではありません。また、申請上限は年度ごとに1回限りです。
助成金を受け取る手順
助成金はここまで挙げたような要件を満たしていれば自動的に振り込まれるものではなく、所定の手続きが必要となります。そこで次からは、団体経由産業保健活動推進助成金を受け取る手順について解説していきます。
申請
まずは助成金の申請を行う団体が労働者健康安全機構に対して交付申請書を提出する必要があります。機構はその申請書を元に交付・不交付の決定を行い、審査結果を団体に対して通知します。申請書類は労働者健康安全機構の公式ページからダウンロードできます。
契約書の締結
労働者健康安全機構から承認が下りたら産業医・保健師や産業保健サービスを提供する事業者と契約を結びます。交付前に契約を結ぶことも可能ですが、交付対象となるのはあくまで交付決定後に提供されたサービスに伴う費用のみである点には注意が必要です。
契約に基づいた活動の実施
産業医との契約締結後、産業医は契約内容に応じて適切な産業保健サービスを提供します。産業医が行う産業保健サービスのうち、助成対象となるのは以下の通りです。
- 健康診断結果の意見聴取
- 労働者または労災保険の特別加入者に対する保健指導
- 労働者または労災保険の特別加入者に対する面接指導と指導結果に基づく意見聴取
- 労働者または労災保険の特別加入者に対する健康相談対応
- 事業者または労働者もしくは労災保険の特別加入者に対する治療と仕事の両立支援
- 事業者に対する職場環境改善支援
- 労働者または特別加入者に対する健康教育研修、事業者および管理者に対する周知啓発
基本的に以上の要件に当てはまっている場合は助成対象となりますが、注意点もあります。まず、これらのサービスを団体に所属している医師が行った場合はすべて助成対象外です。また健康診断の実施費用、ストレスチェックや集団分析、その他録画等を用いたオンデマンド研修等は助成対象外となります。
助成金の受給
助成金は自動的には支給されません。団体は助成対象期間が終了した日から30日以内に、労働者健康安全機構に対して「支給申請書」を提出する必要があります。機構は申請書を受領したら審査を行い、支給が決定してから支給手続きを開始します。ちなみに不正受給等が発生した場合は交付決定が取り消されたり、返還を求められたりします。返還命令が下った場合は加算金や延滞金がプラスされるなどのペナルティが課されますし、悪質なケースは に機構の公式ホームページ 掲載されるなど社会的信用を失うことにもつながるため、絶対に避けるべきです。
まとめ
ここまで詳しく紹介してきましたが、「団体経由産業保健活動推進助成金」を自社に適用できるかどうか不安のある方は、当サイトがおすすめする産業医紹介サービスを提供している企業に問い合わせることをおすすめします。