過去記事ログ:/kyushoku-research/【人事必見!】産業医の報酬相場は一体いくら?産業医採用の第一歩!
企業は、事業場がある一定の規模に達すると、産業医を選任しなければなりません。
その最初の条件となるのは、
”従業員が50人”
もし雇わなかった場合、法律で罰則を受けることになってしまいます。しかし…
「産業医」について、あなたはどのくらい理解していますか?
特に報酬相場については、決まった金額がありません。よって報酬を決める際は、皆様苦労することかと思います。
ぜひ最後までこの記事を読んで、産業医の報酬相場を知り、産業医についてバッチリマスターしましょう!
・産業医について
・産業医の報酬相場
【目次】
目次
1.そもそも産業医ってなに?
1-1.産業医とは
1-2.産業医設置の条件
1-3.産業医を置かなかった場合は…?
コラム 労働者が50人を超えたら?やることリスト
2.産業医の契約について
2-1.届け出の仕方
2-2.2つの契約の仕方
3.産業医報酬基準額の秘密
3-1.専属産業医
3-2.嘱託産業医
4.求めるもの次第で報酬は変動する!
4-1.報酬の変動要因
4-2.報酬額決定のポイント
5.おわりに
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1.そもそも産業医ってなに?
2019年4月に施行された「働き方改革」において、「産業医・産業健機能の強化」という項目があり、産業医はさらに注目を集めました。
しかし、働き方改革という言葉は知っているものの、具体的に何をすればいいのかわからない!という方は多いようです。
そこでまずは産業医とはなにか?について、簡単に解説していきます。
1-1.産業医とは
産業医とは、“事業場において労働者の健康管理等について、専門的な立場から指導・助言を行う医師”のことです。(日本医師会より引用)
そして産業医の仕事は、以下の項目で医学的な専門知識を必要とするものになります。
- 健康管理(健康診断や面談など)
- 労働者の健康障害の原因調査と再発防止のための措置
- 就労制限、就労上の配慮や就労可否の判断
- 休職・復職判定
- 作業環境や作業の維持管理
- 衛生教育
また、月1回以上は作業場等を巡視し、必要であればなにか措置を取ることも労働安全衛生法で定められています。
さらに産業医は、医師であって、以下のいずれかの要件を備えた者から選任する必要があります。
- 厚生労働大臣の指定する者(日本医師会、産業医科大学)が行う研修を修了した者
- 産業医の養成課程を設置している産業医科大学その他の大学で、厚生労働大臣が指 定するものにおいて当該過程を修めて卒業し、その大学が行う実習を履修した者
- 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験区分が保健衛生である者
- 大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授、常勤講師又はこれら の経験者
産業医のほとんどは「日本医師会認定産業医」の資格を持っています。つまり上の①に当てはまります。しかしこの資格は、研修に参加するだけでほぼ取得できる状況にあるのです。そして、中には1週間もかからず取れる場合もあるので、多くの医師がとりあえず資格を取っているというのが現状です。名ばかりの産業医が増えていることも否定できません。
1-2.産業医設置の条件
労働安全衛生法により、一定の規模の事業場には産業医の選任が義務付けられています。「事業場」とは、同じ場所で関連する組織的な作業をできる場所の単位のことです。つまり同一企業内でも、支店、支社、店舗ごとに1事業場となります。また、従業員とはパート・アルバイト・派遣社員・契約社員もカウントします。これらのことに注意してください。
また、事業場は産業医を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任しなければいけません。
そして従業員数や業務内容によって、雇わなければいけない産業医の人数・種類が異なります。その一覧は以下の表のとおりです。
労働者数 | 産業医 |
~49人 | 選任の義務はなし |
50~499人 | 1名以上 (専属/嘱託産業医) |
500~999人 | 1名以上 (専属/嘱託産業医) ただし有害物質※を取り扱う場合は専属産業医に限る |
1000~3000人 | 専属産業医1名以上 |
3001人~ | 専属産業医2名以上 |
(嘱託産業医と専属産業医という言葉については後で解説します。)
※労働安全衛生規則第 13 条第 1 項第 2 号
イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
ハ ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
ホ 異常気圧下における業務
ヘ さく岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務
ト 重量物の取扱い等重激な業務
チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
リ 坑内における業務
ヌ 深夜業を含む業務
ル 水銀、砒素、黄りん、弗化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り 扱う業務
ヲ 鉛、水銀、クロム、砒素、黄りん、弗化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベン ゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
ワ 病原体によって汚染のおそれが著しい業務
カ その他厚生労働大臣が定める業務
参考:厚生労働省 “産業医について”
1-3.産業医を置かなかった場合は…?
産業医を雇わなかった場合、50万円以下の罰金を課せられることになります。これは産業医に欠員が出た場合も同様です。
また、「名義貸し」という事案も発生しています。名義貸しとは、料金を安くしたいがために、毎月ではなく数ヶ月に1度訪問するという内容で契約するケースです。実際にこのような問題は存在します。しかし、これは立派な労働安全衛生法違反にあたります!そして労働基準監督署の立入検査の際にすぐに発覚し、最悪の場合は罰則を受けることもあります。
したがって、規定をきちんと遵守しましょう!
また、産業医を雇っているということは、「社会的地位を果たす」「法令遵守(企業コンプライアンス)」といった企業責任を果たすことにも繋がります。
~コラム~ 労働者数が50人を超えたら?やることリスト
産業医の選任以外にも、労働者数が50人を超えた場合に義務になるものがあります。
- ストレスチェックの実施(年1回)
- 衛生委員会の設置
- 衛生管理者の選任
- 定期健康診断結果報告書の提出(50人未満は健康診断の実施)
また、ストレスチェックや医師等による健康管理は50人未満であっても努力義務となっています。
2.産業医の契約について
ここでは、産業医を置くことについてはわかったけれど、実際にどうやって契約すればいいの…?という疑問にお答えします。
2-1.届け出の仕方
産業医と契約をしたら、所轄の労働基準監督署長に「産業医選任報告」という届け出を行う必要があります。その際には以下のものが必要です。
- 「産業医選任報告」2部と(1部は事業所控え)
- 医師免許証のコピー
- 産業医認定証のコピー
この産業医選任報告の用紙は、厚生労働省のホームページからダウンロードしてください。書式のダウンロードはこちら
2-2.2つの契約の仕方
産業医と契約を結ぶ際には以下の2つのパターンがあります。
そしてそれぞれにメリット、デメリットがあるので簡単に表にまとめました。
契約方法 | メリット | デメリット |
医師と企業の 直接契約 |
・人事と連携が取りやすい ・一度雇った経験があると交渉がスムーズ |
・簡単に他の医師に替えることができない |
紹介会社などが間に入る 業務委託契約 |
・医師に言いにくい要望などが伝えやすくなる |
・仲介料がかかる |
ただし、紹介会社に依頼する場合は必ず業務委託契約になるわけではなく、採用支援という形で産業医を紹介した後、医師と企業の直接契約になる形式もあります。
3.産業医報酬基準額の秘密
産業医は2つの種類に分けられます。この種類によって、全く勤務形態や報酬相場が異なります。一緒に見ていきましょう。
3-1.専属産業医
専属産業医とは、文字通りその企業専属の産業医です。基本的に職場に常駐し、フルタイムで勤務します。しかし中には、複数の事業所を担当している専属産業医もいるため、どうしても対応が手薄になってしまう可能性があるので注意してください。
勤務日数は週3~4日が一般的です。基本的に医師の中では、週1日程度は別の勤務先で働くことが推奨されています。これはスキルアップや研究のためなどです。したがって、週5日は希望する医師が少ないようです。
基本的な専属産業医の報酬相場(年収)は以下の通りです。
勤務日数/週 | 年収 |
1日 | 300~400万円 |
2日 | 600~800万円 |
3日 | 900~1200万円 |
4日 | 1200〜1500万円 |
5日 | 1500~2000万円 |
3-2.嘱託産業医
嘱託産業医とは、普段は開業医や勤務医として働きつつ、月に1回1~2時間程度企業を訪問する産業医です。もちろん回数や時間は企業によって異なります。
最低限の業務としては、職場巡視や衛生・安全委員会への出席、健康管理のアドバイスが挙げられます。正直、これが一番安く済みます。さらに業務を追加する場合、その分の対価を払わなくてはいけません。報酬が変動する場合については、この先の第4章で解説します。
基本的に嘱託産業医の報酬相場は、月1回の訪問で約5~10万円が一般的です。しかし、従業員が増えるほど産業医の負担は大きくなるため、従業員数が増えるにしたがって報酬も増えていきます。以下の表が目安になります。
従業員数 | 月収 |
50人未満 | 4万円 |
50~100人 | 6万円 |
101~200人 | 7万円 |
201~300人 | 8万円 |
301~400人 | 9万円 |
401~500人 | 10万円 |
501~600人 | 12万円 |
601~700人 | 14万円 |
701~800人 | 16万円 |
801~900人 | 18万円 |
901~999人 | 20万円 |
4.求めるもの次第で報酬は変動する!
4-1.報酬の変動要因
報酬相場は先程の通りです。しかし、この金額は様々な要因によって変動してしまいます。以下に代表的な要因をまとめました。
- 契約方法(業務委託契約の場合、仲介料・紹介料などの手数料)
- 地域
- 業務内容(面談、ストレスチェック、社内研修など)
- 有害物質の取り扱い
- 医師としてのスキル、キャリア
- 英語や外国語の能力(外資系企業の場合)
- メンタルヘルス
特にメンタルヘルスケアは近年重要視されるようになってきた項目です。
精神疾患やストレスなどの専門的知識が必要となる上、時間や労力も必要とされます。現在従業員に起こっていることの対応はもちろん、今後の予防対策も必要になります。
そのため精神科医を雇う場合は、相応の対価として報酬が大幅にアップすることがあります。半日で5~15万円をプラスで支払うケースもあるようです。
また、メンタルケアに対応できる産業医もなかなか少ないので、内科医と精神科医の2人を雇っている企業もあります。
4-2.報酬額決定のポイント
つまり色々とサービスを追加しようと思えば、それだけ報酬額も高くなってしまいます。そこで大切なのは、企業が産業医に何を求めるのかです。現在の社内の環境や労働状態、従業員の様子、今後の展望などをもう一度よく考えて、
本当に必要なサービスは何か、どこまで求めればいいのか
を検討しておく必要があるでしょう。
産業医紹介会社の中には、高額なサービスをどんどん追加されてしまう会社もないとは言い切れません。よって惑わされないようにするためにも、とても大事なポイントになります。
5.おわりに
産業医の報酬は、相場に+αしなければならないものが沢山あります。また、何が必要で何が不要なのか、紹介会社や相手の医師としっかり話し合う必要があります。したがって、
産業医探しに軸を持って選んでいく
ということが非常に重要です。
ぜひ自分の企業に合った産業医を見つけて、従業員が働きやすい環境を作りましょう!